徒然と連想ゲーム

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伊藤計劃トリビュートを読んでいます

 こんにちは、みっくんです。台風に院試とか諸々を洗い流して欲しい心持ちです。

 

 今日は勉強が捗らないのでちょっと気分転換に「伊藤計劃トリビュート」(ハヤカワ書房)を読み返していました。全8編収録(文庫本で800ページ(!))のうち2編を読んだので、ネタバレしない範囲でちょっと感想を書き溜めておこうかなぁと思います。

 

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

伊藤計劃トリビュート (ハヤカワ文庫JA)

 

 

 伊藤計劃氏は00年代に活躍して34歳で夭折したSF作家です。近年、長編作品の「虐殺器官」と「ハーモニー」がアニメ映画化されたので知っている方も結構いそうですね。

 

 さて、今回読んだ第1編「公正的戦闘規範」(藤井太洋)と第7編「フランケンシュタイン3原則、あるいは屍者の簒奪」(伴名練)について読んだ感想を簡単に書いていこうと思います。それぞれの作品は「虐殺器官」、「屍者の帝国」(円城塔が伊藤氏の死後に書き継いだ長編)を意識して書かれていることがわかります。こういう原作者へのリスペクトを随所に感じられるのがトリビュートの良さですね。

 

 「公正的戦闘規範」について、舞台はドローンが安価な自律無人戦闘機として無差別テロに拡散・使用されるようになった中国です。主人公の公正は幼少時に配布されていたゲームアプリの特殊な仕様に気づいてチベットの紛争に巻き込まれて行きます。曲がりなりにも航空宇宙工学徒の端くれなので、ドローンの最近の隆盛とその行き着く先について色々考えさせられました。

 展開としてはだいたい虐殺器官に対するオマージュなのであまり掘り下げても無粋かなぁという感じですね(これを面白いと思った人はぜひ虐殺器官も読もう)。この作品集全体の(というか伊藤計劃作品の)雰囲気を掴むにはとてもオススメです。

 

 「フランケンシュタイン〜〜」について、タイトルの通り人造人間フランケンシュタインとバイオテクノロジーの隆盛による人間性の変化についてを扱った短編となっています。主人公の切り裂きジャック、ライバルのナイチンゲールの他、様々な歴史上の人物が色々な形で登場していて独立した冒険譚としてもとても面白いです。個人的にはトリビュート8作品の中で一番好きですね。

 物語は「人間の生は何を持って定義されるのか」をつきつめていく形で展開して行きます。また、「The Indifference Engine」の小ネタや”虐殺器官』終盤の決定的な嘘”、”『ハーモニー』終盤の致命的な嘘”(作者あとがきより)を用いた読者サービスもあって思わずにやりとしたり,

 物語の終盤、ある生者が死者に対して言葉を投げかける場面では、これ実質作者の計劃氏へのラブレターでは‥‥とか思ったりしてエモみの波状攻撃を食らったりなどしました。そういう意味では伊藤計劃作品を一通り読んだ人にはすごくおすすめできる作品だと思います。

 

 長々と書いてしまいましたが以上です。院試やめてぇ‥‥